ラブソングは舞台の上で

「私、どうしてここにいるの?」

本当に覚えてない。

居酒屋で晴海が腕立て伏せをしていたところで、記憶が遮断されている。

「居酒屋で潰れて、起こしても起きなくて、家知らないから連れてきた」

「重かったよね……ごめん」

またここまで私を担いできたってことだもんね。

申し訳ない。

「ったく、明日香には俺がいないところで酒なんか飲ませらんねーなー」

「よそで飲んだ時にまであんたに迷惑かけないよ」

そもそも、ほとんど飲みになんて行かないし。

晴海は眉間にギュッとシワを寄せ、ビシッと人差し指を私に向けた。

「よそで何かあったら困るんだよ。千秋楽までは俺の女なんだから、俺の前以外で酒飲むの禁止」

「勝手にあんたの女にしないでよ」

自分が酒に強いからって、偉そうに。

私の方が年上なんだから、子供扱いしないで。

「やだね。会社とかで飲み会があるときは絶対に俺に場所と時間を連絡すること。ソフトドリンクで我慢すること。わかった?」

「わかんない!」

もう、私が酒に弱いからってバカにして。

劇団って、団員のプライベートにまで口を挟むものなの?

「明日香、お前わかってないだろ」

「何をよ」

口答えすると、晴海は先週のように私に馬乗りになった。

そして私の両手首を頭上でがっちりホールドして、告げる。

「言うこと聞かなきゃ、この場で犯す」

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