ラブソングは舞台の上で
私はまたレバーブローを一発お見舞いしてやろうと思ったが、拳は頭上から動かせない。
片手で簡単に両腕を封じられているなんて、悔しい。
それなら膝をと思ったが、太ももに乗られてしまっているから動かせない。
力一杯全身をくねらせてみたけれど、ベッドが揺れるだけで、まるで歯が立たなかった。
晴海は優越感たっぷりの笑みを浮かべ、空いている方の手でスルッと私の頬、耳、首、鎖骨を順に撫でた。
ふん、体がダメでも、まだ口があるんだから。
「そんな気、本当はないくせに」
私はあんたのヒロイン。
ここで手を出して私に辞められてしまったら困るはずだ。
「ふーん。殴れないから口で攻撃するんだ。可愛いなぁ、明日香は」
「バカにすんな!」
「その口、塞いじゃおうかな」
晴海の指が彼の唇に触れる。
そしてその指で、私の唇に触れた。
この時点で、間接キスは成立している。
「なっ……!」
晴海の唇が迫って来るのを想像して、ボッと顔が熱くなった。
それを見た晴海がケラケラ楽しそうに笑う。
そして、唖然としている私の口を、空いている方の手で軽く塞いだ。
「俺、別に口で塞ぐって言ってないでしょ。なーに赤くなってんの。明日香のエッチ」