ラブソングは舞台の上で

「んーーーーー!」

悔しい! 悔しい! 何なの、こいつ!

口で塞がれることを意識したのは事実だけど、そう仕向けたのは晴海じゃない!

ていうか、晴海、劇団ではひたすらイジられキャラだったくせに。

みんなと一緒にいたときは、一度もこんな扱いしなかったくせに。

私、今、こいつに散々イジられてる。

何なの? これが裏の顔なの?

「そんなに期待してるなら、お応えしましょうか?」

私はキッと晴海を睨みつけて、口に当てられている指に、カリッと噛み付いた。

「いってー!」

晴海の力が抜けた隙に、腕を振りほどき、ベッドから降りる。

冬の冷たい空気が辛い。

だけど熱くなった顔を冷ますにはちょうどいい。

「期待なんてするかボケ!」

朝っぱらから近所迷惑を顧みずに大声を上げる。

晴海は私が噛んだ指を押さえ、ベッドに転がり、痛いと言いながらも楽しそうに笑い続けていた。

「今度は噛み付き攻撃か。明日香、最高に可愛いね」

「私、そんなキャラじゃない!」

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