ラブソングは舞台の上で

ずっとずっと、クールだと言われてきた。

それがどうしてなのかはわからないけれど、みんながそう言うのだから、私はクールな性格をしているのだと思う。

誰かに腹を立てることも少ないし、キャーキャーはしゃぐこともあまりない。

家族以外の相手に、こんなにムキになって言い返したのは晴海が初めてかもしれない。

「確かにキャラじゃないけど、明日香は完全にMだと思うよ」

M? 私が?

「まさか」

何言ってんの、こいつ。

ちょっとからかったくらいで私の性癖を決めつけないでよ。

私は極めてニュートラルなはずだ。

「俺はドMのフリしたドSだから、俺たち相性いいかもね」

「そんなの知らない! シャワー浴びてくる」

またムキになって返すと、晴海はまた楽しそうに笑い転げていた。

洗面台に置いてあるメイク落しで毛穴に入り込んだファンデーションと目の下にまで広がったマスカラを落とし、遠慮なくゆっくりシャワーを浴びる。

ああ、ほんと、付き合ってもいない男の部屋で何やってるんだろう……。

晴海にイジられているのに時間を取られ過ぎた。

着替えに帰りたかったけれど、もう今からじゃ会社に間に合わないや。

仕方ない。

今日は昨日の服のまま出社しよう。

仕事着に着替えるのだから、きっと問題ないだろう。

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