ラブソングは舞台の上で

脱衣所から出ると、この間の土曜の朝と同じように、晴海がコーヒーを淹れてくれていた。

この間はブラックだったけど、今日は砂糖とミルクが入っている。

ブラックが苦手なことに気付いて、気を使ってくれた……のかな。

素直に美味しい。

朝のワイドショーを見ながらコーヒーをいただいている間に晴海もシャワーを済ませ、上半身裸の状態で現れた。

「せめて服を着たら? 寒くないの?」

悔しいけれど、やっぱりこいつの腹筋はイイ。

滑らかな凹凸を、この冷たい手で撫で回してやりたい。

「寒いけど、俺の美しい腹筋をアピールしとこうと思って」

「ほんと無意味だよね」

と、口では言っておく。

「そうでもないよ。だって明日香、俺の腹、好きでしょ?」

……なんでバレたかな。

チラ見してたの、やっぱ気付かれてたのかな。

「別に好きじゃないし」

「今なら触ってもいいよ」

「えっ?」

いいの? マジで?

私の反応に全てを見透かした晴海は、ニヤリと笑って言う。

「明日香のエッチ」

……ほんとムカつく!

「触るなんて言ってないじゃん」

「触りたいって顔してたもん」

「してない」

晴海には敵わない。

私はふてくされて晴海から顔を背け、出社のためにメイクを始めた。

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