ラブソングは舞台の上で
晴海の部屋を出た時間の都合で、いつもよりちょっと早めに会社に到着した。
たった20分早く着いただけなのに、景色が違って見えて新鮮だ。
更衣室に入ると、詩帆さんが先に着替えていた。
「おはようございます。今日は早いですね」
「おはよう。そう言う明日香だって……ん?」
詩帆さんが首をかしげる。
「どうしたんですか?」
「服、昨日と同じじゃないの」
さすが詩帆さん。鋭い。
「き、気のせいです」
下手な嘘など通用しないのはわかっている。
詩帆さんは途端に悪い顔になった。
下世話は詮索は、もはや避けることができない。
「確か昨日は、約束があるからってバタバタ仕事切り上げて帰ってたよね」
「そうでしたっけ」
他人事なのに、よく覚えていらっしゃる。
「誰と一緒にいたのかなぁ? 気になるなぁ」
「誰とって、みんなとですよ」
劇団のみんなといたのだから、嘘ではない。
「何も恥ずかしがることないのに。あんたがそういう相手と巡り会えたのなら、私は嬉しいよ」
「いや、本当にみんなといて……」
「じゃ、先に事務所入ってるね」
詩帆さんは嬉しそうな顔をして更衣室を出て行った。
いや、本当にみんなといたんだけど。
はじめのうちは。