ラブソングは舞台の上で
これってつまり、首の皮が一枚繋がった状態だってこと?
とりあえず、クビにはならなかった。
だけど、プレッシャーはまた大きくなった。
「明日香。これから毎回、稽古が終わったら俺と個人練習な」
「うん。頑張る」
左横から恵里佳ちゃんの強い視線を感じる。
もうあえて振り向くまい。
「今日はこれで上がりにする。俺は衣装と小道具の打ち合わせに行ってくるから、最後の人は施錠して出るように」
「はい! お疲れさまでした」
高田さんは時計を見て、約束の時間が迫っているのか、早足に稽古場を出て行った。
扉が開いて閉まる数秒の間に、外の冷たい空気が流れ込んできて鳥肌が立った。
そして、なかなか引かない。
石原さんなど演者以外の団員はすでに上がっており、やけに静かだ。
気まずい。空気が重い。
私のせいで、あまり練習がはかどらなかった。
私が下手なばっかりに、申し訳ない……。
「みなさん、すみません。私、たくさん練習してきます」
みんなの顔を見ると、ちょっと泣きたくなった。