ラブソングは舞台の上で

これってつまり、首の皮が一枚繋がった状態だってこと?

とりあえず、クビにはならなかった。

だけど、プレッシャーはまた大きくなった。

「明日香。これから毎回、稽古が終わったら俺と個人練習な」

「うん。頑張る」

左横から恵里佳ちゃんの強い視線を感じる。

もうあえて振り向くまい。

「今日はこれで上がりにする。俺は衣装と小道具の打ち合わせに行ってくるから、最後の人は施錠して出るように」

「はい! お疲れさまでした」

高田さんは時計を見て、約束の時間が迫っているのか、早足に稽古場を出て行った。

扉が開いて閉まる数秒の間に、外の冷たい空気が流れ込んできて鳥肌が立った。

そして、なかなか引かない。

石原さんなど演者以外の団員はすでに上がっており、やけに静かだ。

気まずい。空気が重い。

私のせいで、あまり練習がはかどらなかった。

私が下手なばっかりに、申し訳ない……。

「みなさん、すみません。私、たくさん練習してきます」

みんなの顔を見ると、ちょっと泣きたくなった。

< 65 / 315 >

この作品をシェア

pagetop