ラブソングは舞台の上で



初稽古から一夜明け、朝。

とにかく「それ」は、想像以上だった。

詩帆さんが朝の挨拶代わりに言う。

「ヨボヨボのおじいちゃんみたい」

酷いけれど的確な表現に、24歳女盛りのプライドに傷がつく。

「全身筋肉痛なんです……」

ぶっきらぼうな返し方だったかもしれない。

けれどこれが精一杯。

喋るだけで顔の筋肉が痛いのだ。

体を動かした時にちょっと痛む程度なら、笑って言えたのだと思う。

だけど今回ばかりはそんな甘っちょろい痛みではない。

どんなに簡単な動きをしても痛む痛む。

厳密に言えば、動かず突っ立っているだけでも痛い。

詩帆さんはおかしそうに笑って言った。

「わかるわー。久しぶりだと、筋肉痛になっちゃうのよね」

社会人になって以来、運動する機会にはめっきり恵まれなかった。

運動不足であることは自覚していたけれど、昨日の約2時間だけで、ここまでボロボロになってしまうなんて、自分が本当にオバサンになったみたいでちょっとショック。

「今後は自主的にやっていかなきゃって思いました」

「やっだー明日香ってば、大胆発言!」

「はい?」

私、何か大胆なこと、言いました?

詩帆さんは小さな声で尋ねてきた。

「一体どれだけ激しいプレイだったの?」

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