ラブソングは舞台の上で
12月下旬に差し掛かった。
稽古のない日でも毎日家で筋トレやストレッチを念入りにやった成果なのか、あんなに苦しんだ筋肉痛はほとんどなくなっている。
稽古場にはもう何度も足を運んでいるし、道だってわかるのに、晴海は私との待ち合わせをやめようとしない。
稽古の後の個人練習を終え、各々の帰路へと別れるとき、必ず次の待ち合わせ時間を言いつけるのだ。
だから今日は、会ってすぐに言ってみた。
「ねぇ、私、一人でも稽古場行けるよ」
すると晴海は頬を膨らまし、ムスッとした。
「俺と行くのイヤ?」
「イヤじゃないけど、効率悪くない? 私、もうちょっと早く行けるし」
平日の待ち合わせは、大体が7時過ぎだ。
晴海は大学の研究室やらコンビニのバイトやらフットサルサークルやらで忙しく、いつもバタバタしている。
一方私は会社を出てから晴海が来るまで、このショッピングセンターをフラフラしているだけ。
晴海なしでも団員のみんなと馴染めてきたし、その時間を練習にあててもいいのではないか、と思っていた。
晴海がムッとしたままキッパリと言い放つ。
「ダメ」
「ダメなの?」
「明日香が一人でよくても、俺がやだ」