ラブソングは舞台の上で

デジャヴかと思った。

フレーズもトーンも、翔平と同じだった。

「え?」

驚きのあまり、我ながら可愛くない声が出た。

翔平だろうが晴海だろうが、クリスマスイブが特別な意味を持つことに変わりはない。

そんな日に私を誘うのは、それなりの意味があるのだろうか。

私は緊張しつつ次の言葉を待つ。

「ミュージカル、見に行かない?」

「へ? ミュージカル?」

微妙な線だ。

デートとも取れるし、勉強とも取れる。

「明日香、見たことないって言ってたじゃん。実は研究室のメンバーが最近彼女にフラれてさ。そいつがイブに彼女と行く予定だったチケットが回ってきたんだよね。プロのステージだし、勉強になるかなーと思って」

晴海はそう言ってダウンジャケットのポケットからチケットを取り出した。

勉強で推してきたことに、やや安心する。

演目を見ると、テレビでCMをやっていた舞台だ。

当然だけど、チケットは二枚ある。

「あ、もしかしてイブはもう予定あり?」

「いや、ない。ないんだけど……」

「けど、何?」

「なんかクリスマスデートのお誘いみたいで、ビックリした」

晴海はまたムスッとして、二枚のチケットで私の頭をペシッとはたいた。

「みたい、じゃなくて、紛れもなくクリスマスデートのお誘いなんですけど」

「えっ?」

何それ。ほんとに?

私たちの間に流れている空気が一気に色っぽくなる。


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