ラブソングは舞台の上で
私ひとりがあわあわしていると、毒舌女王の恵里佳様がすかさずとどめを刺した。
「うそつき。夏、晴海ちゃんに振られた二人、どっちも食べたくせに」
「はあっ?」
みんなの声がキレイに揃った。
それと同時に卓弥さんの顔がひきつる。
どうやらこれは恵里佳ちゃんと卓弥さん本人以外知らなかったらしい。
「てめぇ、マジかよ卓弥!」
タカさんが胸ぐら、いや、ネクタイを掴む。
「はは、二人とも辞めた後だったし、ノーカウントでしょ」
キラキラの笑顔で悪びれなく言ってのける卓弥さんに、周囲から怒りと呆れのため息が。
「お前、本っ当ーに節操がないな! このエロオヤジが!」
「エロはいいけどオヤジはやめてよ。俺まだ若いし結婚してないし子供もいないもーん」
恐るべし、イケメンの魔力。
これは本当に妊娠してしまうのかもしれない……。
さっきまでの数分間、私は彼の雰囲気だけで、何となく悪いことのできない安全な人だと思ってしまっていた。
危なかった。
晴海が私に念を押す。
「わかった? 卓弥さんの半径2メートル以内に近付いちゃダメだからな」
「うん、そうする」
横で私たちの会話を静かに聞いていた堤くんも、小声で告げた。
「恵里佳も、近付かないでね」
恵里佳ちゃんはプイッとそっぽを向く。
「堤うるさい。わかってるし」
そんなに冷たくしちゃっていいんですか、女王様。
堤くんはいつも恵里佳ちゃんに献身的なのに。