ラブソングは舞台の上で

今日の稽古は歌合わせから始まった。

まずは卓弥さんのギターに合わせて発声練習。

それから各々のソロ曲の言い回しなどをチェックしてもらう。

みんなの歌をBGMにストレッチや筋トレをやりながら順番を待つ。

やっぱりっていうか、聞いてはいたけれど、みんなあんまり上手くはない。

ともちゃんはせっかく地声が高いのに、息が漏れすぎている。

恵里佳ちゃんは力みすぎて固いし、高音が出しきれていない。

タカさんの低音は響いて素敵だけど、強弱の変化は苦手みたい。

堤くんは、どうしてもしゃくり上げるクセがあるようだ。

そして、晴海の番。

「あれ。お前、歌上手くなった?」

卓弥さんが言った。

私は背筋を鍛える動きをしながら、心の中でガッツポーツ。

「あ、わかります? 稽古の後、秘密の特訓始めたんすよ」

そう。

晴海にセリフを教えてもらう代わりに、私は晴海に歌を教えている。

教えるといっても、上手く聞こえるコツをいくつか伝授しただけだけれど、その効果があったようだ。

良かった。

私も少しは役に立てた。

「次、明日香ちゃん」

「はい」

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