ラブソングは舞台の上で

その言葉をどう捉えればいいのだろう。

これからもたくさんいじめてやるという意地悪宣言にも聞こえるし、もっと一緒に語らおうという愛の告白のようにも聞こえる。

だから私はわざと能面のように無表情を装って、わざと冷たい声を出した。

「あっそ」

「そっけないなー。これからいじくり倒すんだけど」

「やめてよ」

私が頑なになれば、きっと晴海はもっと躍起になって能面をかち割ろうとする。

晴海は私を怒らせるのも笑わせるのも上手い。

感情を露にするのは変わらず苦手だけど、晴海といると言葉が簡単に出ていく。

晴海とのくだらないやり取りは、すごく楽しい。

公会堂を出ると、人の流れはざっくり二手に分割されていた。

繁華街へ向かう流れと、駅の方へ向かう流れだ。

ふたつの分岐点に差し掛かる少し前に、晴海が切り出した。

「あのさ、これからどうする?」

「えっ?」

現在時刻は10時半過ぎ。

これからって、それは一体どういう意味で?

「飯とか、酒とか。さっきは適当なとこで小腹を埋めただけで、まともに食えなかったしさ」

「ああ、そういうこと」

ビックリした。

性懲りもなく、何かスゴいことを言われるような想像をしてしまった。

お泊まりを意識してしまったのは、周りにいるカップルがこれから泊まるホテルの話をしているのが聞こえていたせいだ。

期待していたわけじゃない。

「俺は大学が冬休みに入ったし、明日は夕方からサークルでパーティーやるくらいしか予定ないけど、明日香は普通に仕事だろ?」

「まあ、うん」

明日から本格的に年末の決算に向けての作業に入るから、べらぼうに忙しくなる。

クリスマスとは、事務泣かせなタイミングだと思う。

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