ラブソングは舞台の上で

このままこの街で食事をして、時間を忘れて終電を逃したりしたら、晴海とどこかのホテルでお泊まりになるのだろうか。

そうなったら、たぶん、何もないなんてことは考えにくい。

何を考えているのだろう。

私、どうかしてる。

舞い上がりすぎだ。

冷静さを著しく欠いている。

想像が暴走して、晴海の言葉を正しく読み取れない。

私はいったい何を期待しているというのか。

思考が空回りしてフリーズしている私を見て、晴海が面白がるように笑った。

「とりあえず、戻るぞ」

「う、うん」

なんだ、そっか、戻るのか。

そりゃそうだよね。

私、明日も朝から仕事だもん。



列車で地元に戻り、駅から少し行ったところのファミレスで安いシャンパンを一杯だけ飲み、舞台の感想を言い合いながらフライドチキンとミックスピザを食べた。

店を出ると、空気が刺すように冷たかった。

時刻は既に0時を回っている。

「明日香、ここからどうやって帰るの?」

「歩くつもりだけど」

バスはもう出ないけれど、タクシーを使うほどの距離でもない。

「じゃあ送ってく」

「えっ? 悪いよ。もうこんな時間だし」

ここからだと、晴海の家は違う方向にある。

私を送ると、ものすごく遠回りだ。

「バカ。こんな時間だからだろ。俺のヒロインに何かあったら困る」

「でも」

「いいから。行くぞ」

晴海は優しい。

はじめは見かけ倒しでメチャクチャなやつだと思っていたけれど、良識のあるいい青年だ。



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