欠片になった彼と、彼女の記憶



「いた~…優弥が引っ張るから…最悪」



擦りむいた程度だったのですぐに立ち、こちらに振り返っていた優弥をキッと睨むようにして顔を上げた。


いつもなら〝お前の足短すぎ〟とか言ってくるのだけど彼の顔は寂しげで何かを無くしてしまった子供のような目をしていて息をのんだ。



「夢乃、俺との約束覚えてる?」



「約…束…?」



「約束…しただろ?幼なじみってもう言わないって」



あまりにも唐突な会話に私はちんぷんかんぷんで沈黙してしまった。


優弥は「そうか」と言ってまた前を歩いて行ってしまった。


優弥は幼なじみだし、でも幼なじみって事隠したいのかな?


よくわからない思い出せない約束だったけど数歩先にいる彼の後を着いて静かに帰宅した。



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