欠片になった彼と、彼女の記憶
「優弥…」
「同じ授業だから一緒に帰ろうと思ったのに何先に帰ってんだよ」
「…ごめん」
優弥の髪が夕日に染まって綺麗で風になびいていた。
「どうした?具合悪い?」
「悪くない。なんでもない」
もし、本当に彼女がいるなら誤解されちゃうしあまり話さない方がいいし一緒に帰らない方がいいしなんてグルグル考えて〝彼女とかいるの?〟と聞けばモヤモヤも全てなくなると思った。
でも、この前の〝約束〟も思い出せずにそんな事聞くのは図々しいと思い結局聞けなかった。
帰るぞ、と言われて優弥が私の横に来て足を進めたので自分も歩き始めた。
「病み上がりなんだから気を付けろよ」
「かすり傷だけだったんだし、もう大丈夫だよ!そんなに気を使われるとなんか…」
「なんか?」
「なんでもない!とにかく大丈夫だから!」
「…」
やっぱりモヤモヤは取れなくて一緒にいて楽しいはずのいつもの会話もどこかぎこちなくなってしまう。