欠片になった彼と、彼女の記憶


彼、茂呂優弥(モロ ユウヤ)は小学生の時からの同級生兼幼なじみで中学、高校共に同じ学校だった。


気も合い、家も3軒隣ということもあって放課後はいつもつるんで遊ぶのが日課になりつつあり両家族とも仲良くしている。


私のことは小さい頃から〝元気だけどのろまで何も考えてない感じが面白い〟といって彼によく、からかわれていたのを覚えている。


高校に入ってから背が急激に伸び、恐らく180cmはあるだろう。


「小さい」と言って22cm下にいる私の頭をよくわしゃわしゃと撫でていた。


キリッとした目つきに黒髪で猫っ毛なのかふんわりとした容姿だ。


意地悪で少し無口な彼は口に当てていた手を下ろし、



「お前が真剣に鏡見てるから気づかなかっただけ」



と口元は上がったまま答え、穏やかな顔でこう続けた。



「でも良かったな。今日までに退院できて元気になって」



「…うん。ありがと」

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