欠片になった彼と、彼女の記憶
布団をかぶった上から優弥がこう呟いた。
「夢乃、お前は事故にあって欠落している記憶はないって言うけど…あるよ」
「え?」
かぶっていた布団をまた肩の位置までゆっくり下げ上にいる優弥を見た。
「あるんだよ。お前があの日から思い出していない記憶。約束のこともそうだ」
「確かにその約束については思い出せていないというか記憶になくて…。そんなに言うなら優弥が教えてよ。私に教えてよ」
欠落している記憶があるというのなら教えてくれれば思い出せるのではないかと、このもどかしい気持ちが晴れるのではないかと思い少し責めるように言った。
少しだけ沈黙が流れた。
「それは…俺は夢乃を信じているから。だから時間がかかっても自分で思い出してほしい。」
優弥は寂しげな表情で私を見下ろしながらそう語るのだった。