欠片になった彼と、彼女の記憶
「取り戻すよ、お前の記憶」
優弥はそう言って私を抱きしめ、少し軽く触れるか触れないかの距離で額に口づけしてきたのだ。
けれど私はなんでか懐かしいと思いながらその額への口づけに静かに身を任せた。
「もう嫌がらないんだ」
「!」
身を任せてしまったからか、意地悪く聞いてきてハッとした。
優弥は抱き寄せていた私の体を元に戻し
「じゃあ…早く治せよ、風邪」
と微笑んで言って部屋のドアの方へ進んだ。
「そうだ、そういえばさ」
そう喋りながらドアの前で優弥が立ち止まりニヤリとした顔でこちらを振り向いた。
「俺、彼女いないから。安心して」
「!!!!」