欠片になった彼と、彼女の記憶
2週間前、私は見慣れない天井がある部屋で目を覚ました。
あの部屋は病院の一室だった。
今から1ヶ月前、3月上旬のこと。
私立大学を志望していた私は受験も終わり家でのんびりしていた。
母がおつかいを頼んできたのだが、その出先に向かう途中で交通事故に巻き込まれてしまったのだ。
幸い、かすり傷で済んだものの眠ったまま2週間が過ぎ…という事だった。
目覚めてから少しして体力的にも回復してきた頃、医師に〝記憶が欠落しているかもしれない〟と伝えられた。
自分では名前も好きな食べ物もこれから入学する大学もスラスラ答えられるし欠落している部分なんてないと思っている。
ただ、優弥は私のこの考えに納得していないように見えた。