欠片になった彼と、彼女の記憶



「…私、事故にあってたんです」



「事故?」



「はい。受験も終わった3月の初めに。


だからそのてつ先輩が企画した集まりには行けなくて」



「そんなにひどい怪我だったのか?


あの時茂呂から行けないって連絡もらって、でもあいつ村下がいなくても顔出す奴だったから不思議に思ってな…」



「いえ、怪我はなかったです。かすり傷程度ですみましたよ。でも…」



「でも…?」



「それから2週間近く眠っていたんです。


なので目が覚めたのは事故から2週間後でした。


その後の検診で医師に記憶が欠落しているかもしれないって言われて」



その時のことを淡々と話した。

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