先生をそれでも……
ガラガラガラッ。

まだ誰もいない。

それはそうだ、入学式はさっき終わってもう皆帰るのだから。

でも、私は帰りたくない、ううん。

帰る場所なんてないんだ。

「まだ生徒がいたのか、帰らないのか?」

ビクッ!

誰だろうと思い振り返ると。

今日発表された私のクラスの担任だった。

確か名前は……。

「おいおい。もしかして俺の名前忘れたのか?さっき発表したばっかりだぞ」

「いや、その、すみません。」

「まあ良いけどな。俺は野ヶ村 洸介(ののむら こうすけ)だ!覚えておけよっ!」

元気な先生だなと思った。
長身で少しくせっ毛の黒髪に綺麗な目。

「野ヶ村先生はどうしてここに?」

「お前みたいな生徒が居ないか見回りだ~」

ん?もしかして先生も私の名前を……。

「先生」

「なんだ?」

「私の名前言ってみてください」
< 11 / 15 >

この作品をシェア

pagetop