☲ミラーが笑った◎
 若草学園は小学校から大学まで同じ場所にある大きな学校だ。ひろみと幼稚園が一緒だった子が二人、その若草学園小学校に行っている。

でも、ひろみは、その優という子に心当たりはなかった。

「優は、作文が好きなの?」

「ああ、書くことが好きらしい。将来、作家にでもなるのかな」

「ぼくは読むのは好きだけど、でも書くのはいやだな」

「それじゃあ、とても作家にはなれないな」

「うん、いいんだ。ぼくはエンジニアになるんだから」

「エンジニアか。エンジニアといってもいろいろ有るからな」

「ぼくね、コンピュータが好きだから、コンピュータのエンジニアになろうかなって思っているんだ」

「コンピュータのエンジニアか。なんか、むずかしそうだな」

ひろみがミラーボーと話をしていると、横の道から十字路に入ってきた自動車が、ゆっくりと東の坂の方に向きを変えた。

その後ろの席から誰かがひろみを見ている。

自動車の音にはっとして、ひろみも自動車のウインドウをちらっと見たが、光が反射して中までは見えなかった。

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