☲ミラーが笑った◎
「もういいから、座ってノートを開きなさい」

「はい・・・」

 ひろみはノートを開くと、先生が板書した数式をノートに書き出した。

 休み時間になり、机の上の消しゴムのかすを拾っているところに、廊下側の席にいた綾香が立ち上がって、ひろみの方に歩み寄った。

「ねえ、ひろみくん」

「はあ・・」

「あたしね、今朝十字路の角でひろみくんの姿を見たの」

「えっ・・・」

「あたし、今朝ママに車で送ってもらったの。そしたら下の十字路の角にひろみくんがいたから、ひろみくーんって呼んだんだけど。聞こえなかった?」

「えっ、聞こえなかったよ」

「たぶんそうだと思ったんだけど・・・」

「知らなかった・・」

「ひろみくん、誰かと話していなかった?」

「いっ、いや、話していない」

ひろみは、どぎまぎして答えた。

「そう?誰かがカーブミラーのうしろかどこかにいて、何か話しているように見えたの


「いっ、いや、誰とも話してなんかいないよ・・」

「そう・・・・」

 綾香はまだ納得のいかない顔をして、自分の席に戻った。

< 14 / 42 >

この作品をシェア

pagetop