☲ミラーが笑った◎
 その日の帰り、ひろみはミラーの下に立ち止まり、上を見上げて言った。

「ミラーボー居る?」

「ああ、いるよ。おかえり、ひろみ」

ミラーボーが眠そうな声で言った。

「あーあ、今日も先生に注意されちゃった」

「またかい、ひろみ」

「うん。算数の時間にボーっとしていたんだ」

「何か別のことを考えていたんだな」

「そんなことないけど・・」

「じゃあ、なんでだ?」

「ノートを開いていなかったから、先生に注意されちゃった」

「それは注意するだろうな」

「優はもう、帰って来た?」

「ああ、ちょっと前にスクールバスが来てな。バスを降りてからここで少し話をして、それから帰って行った」

「へー、どんな話をしたの?」

「ああ、ひろみのことを聞いていたな」

「えー、ぼくのことを知ってるの?」

「ああ、よく先生に怒られる子だって、話しておいた」

「へんなこと話さないでよ。イメージが悪くなっちゃうよ」

「あははは、そうか。それじゃあ今度優に会ったら、ひろみの良いところを話しておいてやる」

「うん、そうして」

「でも、ひろみの良いところって何だ?」

「うーん」

ひろみは考え込んでしまった。
< 15 / 42 >

この作品をシェア

pagetop