☲ミラーが笑った◎
事故が起きた
 それから一週間たったある日、その日は朝からどんよりとした曇り空だった。

ひろみはいつものようにスクールバッグを片手で持ち、一台の車が十字路を通り過ぎるのを待ってから、横断歩道を渡り、ミラーの下に立った。

「おはよう、ミラーボー」

上を見上げてひろみが言った。

「おはよう、ひろみ。きょうは少し遅いんじゃないか」

「うん、今朝寒くて、ふとんからなかなか出られなかったんだ。もうちょっと、もうちょっとって言っていたら、ママにふとんをはがされちゃった」

「そうか。ママもたいへんだな」

「そうでもないよ。一人になったら、のんびりしているんだもの」

「そんなことを言っていいのか?」

「だいじょうぶさ。優は、もう行った?」

「ああ、さっきスクールバスが来てな。それに乗って行った」

「ぼくもいそがなくちゃ。じゃあ、またね」

「ああ、気をつけてな」

 いつも校長先生が、校門の前でおはようとあいさつをしてくるから、遅れて入ったらちょっとばつが悪い。

ひろみはバッグを左手でかかえて、坂を駆け上って行った。


 事故はその日の夕方に起きた。

校門を飛び出したひろみは、通学路から広い車道に出て、坂道を一気に走り下りた。


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