☲ミラーが笑った◎
 ひろみの頭ごなしにミラーボーが叫び声をあげた。

ひろみが振り向くと、女の子が十字路の真ん中に、ひょこひょこと出てきたところだった。

「ひろみ、女の子が危ない。早く、どけて」

ひろみは、とっさに十字路の真ん中に飛び出し、女の子を抱き上げた。

それと同時に、キキーっという大きなブレーキの音がひろみに迫った。

その瞬間、ミラーボーの片足が伸び、ひろみの背中をドンと蹴った。

ひろみは女の子を抱いたまま、十字路のわきの草むらに転がり込んだ。

次の瞬間、あわててハンドルをきったスポーツカーがカーブミラーに激突、ドシーンという衝撃が響き渡り、それに気がついた母親が、きゃーっと大きな悲鳴を上げた。

スポーツカーのバンパーがへこみ、カーブミラーがスポーツカーのルーフの上に覆いかぶさっていた。

「あー、みゆき、みゆき!」

 女の子の母親は、ひろみの腕の中から女の子を取り上げると、へなへなとその場に座り込んでしまった。

どうやら、腰がぬけてしまったようだ。

ひろみも頭の中が真っ白になり、立ち上がることができなかった。

大きな音を聞いた人々が、大勢集まって来た。

「警察に電話だ」

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