☲ミラーが笑った◎
 翌朝、ひろみは朝食もそこそこに玄関から飛び出て、十字路に走って行った。

「あーっ!無い」

十字路に出たとたんに、ひろみの口から悲鳴が上がった。

ミラーボーが無い。事故を起こしたスポーツカーもミラーボーの姿も、どこにも無かった。

ひろみは十字路から離れると、バス停の前を通り田んぼに出た。


広い田んぼに人影は無く、その上に無限の大空がどこまでも広がっている。

「ミラーボー、ミラーボー、どこに行ったのー」

ひろみは声を限りに叫んでみた。しかし、返ってくるのは風の音だけだった。

ひろみは再び十字路にもどると、もう一度上を見上げた。

いままで目一杯、大空を映し出していたカーブミラーが無くなり、そこには無音の空間だけが残されていた。



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