☲ミラーが笑った◎
(へえー、こんなところにカーブミラーが・・)

普段、あまり車の通らない車道なのだが、道が西から東に向かって真っ直ぐに延びているため、車はスピードを出したままこの十字路を突っ切って行く。

子供や年寄りにとってはたしかに危険なところである。

そこに大きなカーブミラーが立てられた。

しかし、よく見ると、このミラーの格好はちょっと変わっていた。

鏡は大きくて丸い普通の鏡だけれど、その下に二本の足が付いている。

その大きなカーブミラーをひろみは下から見上げた。

坂道を登って行く車道と、その上に青い空が映っている。

「おい、子供」

 突然、頭の上から声が聞こえた。ひろみはびっくりして、ちょっと後ずさりをした。

「おい、子供」

また、同じ声がした。

「ぼくは、ひろみっていうんだ。こども、こどもっていうな」

「あはははは、そうか。ひろみっていうのか。じゃあ、これからひろみって呼ぼう」

どこからその声が聞こえてくるのだろう。

ひろみは不思議に思って、空を見上げた。誰かが傍にいるわけでもない。

「ここだ、ここだ。ひろみ」

< 3 / 42 >

この作品をシェア

pagetop