☲ミラーが笑った◎
 ひろみがもう一度カーブミラーの鏡を見ると、鏡が少し下を向き、そこにぼーっと顔のようなものが写っていた。

「うわ、ミラーがしゃべった!」

「そうさ、おれはミラーのミラーボーだ」

「ミラーのミラーボーって言うの?」

「うん、そうだ。おれはミラーボーだ」

鏡がひろみの顔を見て応えた。

「誰がミラーボーって付けたの?」

「スコップを持った男たちがおれのことをミラーボーって言っていたんだ。だから、おれはミラーボーなんだ」

「それじゃ、ぼくもミラーボーって呼んでいい?」

「ああ、いいさ」

ひろみは鏡に顔を向けてたずねた。

「ミラーボーは誰とでも話ができるの?」

「いや、そうともいえないんだな」

「へえー、でも、ぼくとは話せるんだ」

ひろみはちょっと得意な気分になってきた。

「そうらしいな。そう思ったから声をかけたんだ」

「いつ、ここに立てられたの?」

「三日ほど前かな」

「へえー、じゃあ、まだ新品なんだ」

「ああ、新品だ。おれも気に入っている。だが、おれはずっと前からここに居るような気がする」

ミラーが考え込むように言った。

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