☲ミラーが笑った◎
「ああ、居るよ。おれはここから動けないからな」

「しゃべった。やっぱりしゃべった・・・」

「なにをぶつぶつ言っているんだ。ひろみ、今朝話をしたばかりじゃあないか」

「そうだよね、べつに忘れたわけじゃあないんだけど。眠っていたの?」

「ああ、人や車を見てるのもいいけど、たまーに眠くなるんだ」

「ふーん、ぼくとおんなじだね」

「ひろみも、居眠りすんのか?」

「うん、窓のそばに居るから、ぽかぽか暖かくなると、眠くなっちゃうんだ」

「ここも同じだ。でもな、静かな日はいいが、雨の日や、顔が曇っちまう日は危なくて、おちおち寝てなんかいられないんだ」

「ふーん、けっこう苦労しているんだね」

「ああ、ん・・・・」

きゅうにミラーボーが黙ってしまった。

「どうしたの」

「ひろみ、ちょっと向こうを見てみな」

「えっ、どこ?」

「上の方から青い車が坂を下りてくるだろう」

ミラーボーの声が、ちょっと緊張気味になった。

「うん。あの青いスポーツカーだね」

「ああ、あの車には気をつけろ」

「えっ、どうして?」

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