ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「いらっしゃいませ」
カフェの扉を開け店内に入ると、同い年ぐらいの女性スタッフが微笑みながら「何名様ですか?」と声を掛けて来た。
胸元の名札には、【平井】と書かれている。
「あの…副店長の並木さん、いらっしゃいますか?」
店内を一周見渡したけど、その姿は確認出来ない。
この時間は客足が減るのか、客席は空席の方が目立っている。
「並木ですか?少々お待ちーー」
「何しに来た」
平井さんの声を遮るように聞こえた低い声に、思わず肩をビクリと震わせた。
目をやると、並木さんが壁に凭れながら腕を組んで、私を睨むように見つめている。
「っっ、あの…今日は並木さんに話があって」
初めて向けられる並木さんの険しい表情に怯んでしまいながらも、なんとか言葉を続ける。
「少しでいいんです。お時間ありませんか…?」
何事かと、カウンター内の男性スタッフが興味津々に見てくる。
ついには、スタッフルームから出て来た店長のハルさんが「あら?あなたは」と私の目の前まで来ると、
「恵里奈ちゃんじゃない!剛とどう?進展した⁉︎」
と目をらんらんに輝かせて、手を握ってきた。