ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
目を瞑ると、簡単に思い出せる。
クレーコートの中で、白のテニスウェアを着てラケットをくるくると回す先輩。
ボールを打つ時に漏れる声や浮き出る腕の筋肉が勇ましくて。
サービスエースやスマッシュが決まった時に見せるガッツポーズは、ドキドキし過ぎて涙が出たこともある。
先輩の真似をしたくて買った同じメーカーの赤いラケット。
せっかくならお揃いにしたかったけど、先輩が使ってるやつは私には重過ぎて無理だったから、少しでも似てる柄のものを選んだ。
シューズもテニスバッグも、携帯も。
私の全てが先輩色に染まっていく日々。
「でも、もう忘れます。もう二番目は疲れました」
先輩との秘密の関係は、最初は嬉しくて仕方がなかったけど、徐々に自分の首を絞めて行くことに気付いた。
だけど、先輩が好きな気持ちの方が上回っていて。
私は、雁字搦めになっていく自分に気付いていたのに知らんぷりをした。