ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


「っっ!」


途端、並木さんと目が合って思わず息を飲んだ。
すぐにその目を逸らす。


「それじゃ、失礼します」


ペコッとハルさんに頭を下げると、足早に店を出た。

振り返らず、やや駆け足気味で路地へ足を進める。


並木さんと目が合っただけで泣きそうになった。

弱い自分が出てきて、並木さんの優しさに無性に甘えたくなった。

だけど、そんなこと出来るわけがない。


並木さん、私達の話聞いてたかな…
あんなに静かな店内だもん。
聞こえてたよね。

嫌だな…
どう思ったかな。
やっぱり、私のこと最低な女だって…
そう思った…?


じわっと目に涙が滲む。
それを手の甲で乱暴に拭った時、


「待てよ」


急に腕を掴まれた私は、その勢いのあまりよろけて、広くて温かい並木さんの胸に倒れ込んだ。

咄嗟に身体を起こし、並木さんから離れる。

突然のことで思考がうまく働かない。



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