ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「さっきより良い顔してますね。女性は笑ってる方が素敵ですよ」
レジを打ちながら、柔らかく微笑む並木さんにドキッと胸が弾んだ。
並木さんは、見た感じ30歳前後だと思う。
イケメン俳優に引けを取らないぐらいの甘いマスクに、鼻下とアゴに生やしたコンビネーションスタイルの髭。
濃すぎず薄すぎず、それが不潔ではなくむしろ清潔感が溢れ、大人の男性の色気がある。
その甘さとワイルドさのアンバランスなギャップは、女性なら一度はときめいてしまうだろう。
そんな並木さんに、例えそれが仕事用だとしても、優しく笑い掛けられたらドキドキしてしまうのも無理はないと思う。
「ーーっ、恵里奈!行くよ」
「えっ?ちょっ…先輩⁉︎」
先輩は並木さんからお釣りを受け取ると、それを財布に入れる間もなく、突然私の手を強引に引っ張った。
ちらっと見えた横顔が少し怒ってるように見えて、思わず息を飲む。