ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「あ……並木、さん?」
テニスコートを出て校門に向かうと、此処にいるはずのない並木さんが腕を組んで壁に凭れ掛かっていた。
思わず足を止める。
なんでここにいるのか。
驚きと、そしてほんの数パーセントの期待で頭が混乱する。
胸が張り裂けそうなぐらい早鐘を打ち始めた。
「あの人どっかで…」
私につられて立ち止まっていた先輩が、並木さんを見ながら思い出そうと頭を捻っていると。
「遅い」
私達に気付いた並木さんが、険しい顔つきで言った。
「並木さんがどうしてここに…?」
わからない。
並木さんの行動の意味が、私には全く。
浮かんでくることは全部あり得ないことばかりで。
それはない、と必死にその考えを頭の中から追い出す。
「…お前を迎えに来たんだろうが」
「迎えにきた?」
先輩と会う前に電話したことを思い出す。
確かに、何処かにいるのか聞かれたけど。
まさか来てくれるなんて思いもよらなかった。