ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
何処かの店の裏だろうか。
ダンボールや番重が所狭しと重ねられ、回っている換気扇からは香ばしい香りが漂ってくる。
そこでピタッと足を止めた先輩は、急に振り返ると、私から視線を逸らしたまま「ごめん…」と弱々しく呟いた。
「俺……嫉妬した」
「嫉妬?」
「あの店員に見惚れてただろ?だから…」
え…?あの店員って、並木さんのこと?
見惚れてたって…もしかして、それでヤキモチを焼いてくれたの?
確かに並木さんは女性なら誰もが見惚れてしまうほどかっこいい。
低くて少し掠れた声なんて色っぽいと思う。
だけど、私が頭がクラクラするほど見惚れてしまうのは先輩だけなのに。
「はあぁ…俺、まじ余裕なくてダセェ…」
髪をワシャワシャと掻く先輩に胸が高鳴る。
ああホント、先輩には敵わない。
拗ねた先輩も、ヤキモチを焼いて機嫌が悪い先輩も、弱々しくて可愛い先輩も、全部好き…
もっともっとって、欲張りになる。