ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「俺が初めてお前のことを知ったのは、半年前だ」
「え?半年前?」
「杖をついたお年寄りの手助けをして電車に乗るお前を見て、最初は最近の高校生にしては珍しいなって思った」
並木さんの言葉にハッとした。
いつだったかはうろ覚えだけど、杖をついたおばあさんを何度か助けたことがある。
そこは私の地元の駅で、私は降りるはずだったのに困ってるおばあさんを見つけて、思わずまた一緒に電車に乗っちゃったんだよね。
まさか、あれを並木さんに見られてたなんて…
「その数日後、駅前で今にも泣きそうなお前を見つけた。前も見ないで通行人に何回もぶつかって、終いにはナンパされて。よくわかんねぇけど放っておけなくて、手掴まれて連れて行かれそうになってるお前に、気付いたら声掛けてた」
「並木さんが助けてくれたってことですか?」
正直、それはあまり覚えてない。
半年前というと、先輩の高校卒業の時期だろうか。
当時、先輩のことで頭がいっぱいだったし、泣きそうだったってことは何か辛いことがあった後だと思うから、それで覚えていないんだろうけど。