ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


電車に乗り込みドアの脇に立つと、何気なく声のする方に目を向けた。

そこには制服姿の女子高生と杖をついて腰の丸いおばあさんがいて、おばあさんの足元には風呂敷に包まれた荷物が置いてある。


『お気遣いどうもありがとう。少し休んでいただけで、大丈夫ですよ』

『おばあさん、この電車に乗るんですよね?私もなんです。中までお持ちしますよ』

『でも…』

『早くしないとドアが閉まっちゃいますよ?さ、乗りましょう』


女子高生はおばあさんの足元に置かれた風呂敷を持つと、おばあさんの背中を支えるように手を添える。


『そうかい?じゃあお願いしようかね。ありがとう』


おばあさんはにっこりと笑い、近くのドアから電車に乗り込んだ。


この女子高生こそが、恵里奈だった。


この時は、今時の高校生にしては珍しいな、としか思っていなかった。

高校生だけじゃなく、今時の人間にしては、の方が表現として正しいかもしれない。




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