ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


今は困ってる人がいても、誰も声を掛けなくなった。

“恥ずかしいから”
“面倒臭いから”
“急いでいるから”
“自分がやらなくても、誰かがやるだろう”

俺だって恥ずかしい話、その内の一人だ。
現にさっきも、おばあさんが大変そうなのを見ていて声を掛けなかったんだから。


そんな中、恵里奈は戸惑う事もなくおばあさんに手を差し伸べた。

本来あの駅で降りるはずだったのに。
恵里奈は俺が乗り込んだドアから降りてきて、階段横で困ってるおばあさんに気付いたんだ。

そんな面倒なこと、正直俺には真似出来ない。


だから俺は、恵里奈のことをよく覚えていたんだ。



それから数日後。


『あ…すみません…』


仕事を終え、最寄り駅の改札を抜けると聞き覚えのある声が耳に届き目をやった。

そこには、サラリーマンとぶつかり謝っている恵里奈の姿があって。
俺は、今にも泣きそうな顔をした恵里奈から目が離せなかった。


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