ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
掴んだ男の手を、更にキツく捻る。
『いでででっ!』と声を上げる男。
ざわざわと周りが騒ぎ出し、すぐ近くの交番に慌てて入っていく人の姿も目に入った。
早くしないと大変な騒ぎになるな…
そういうのは、まじで勘弁。
『お前らさ、警察に厄介になりたくないだろ?ここは逃してやるから、もうこの子に手出すな』
わかったな?と、半ば脅すように低い声で言う。
男はコクコクと痛そうに顔を歪めながら頷き、手を離してやると一目散に逃げていった。
『さてと、俺らも逃げるか』
『え?』
交番から警察が一人、ちょうど出てきたところだ。
今ならまだ逃げ切れるだろ。
俺は恵里奈の手を掴むと、無理矢理引っ張って走り出した。
ピピーッと笛の音が聞こえるも、完全無視。
恵里奈は、ただ引っ張られるままに後ろをついてくる。
どれぐらい走っただろうか。
やがて笛の音が聞こえなくなり、振り返っても警察の姿は見えない。
『もうこの辺で大丈夫だろ』