ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
『お前は俺に何て言われたいんだ?行くのはやめろって俺が言えばお前は行くのをやめるのか?』
『っっ』
『俺の言葉一つで揺らぐような決意なら、行くのやめろよ。お前みたいなやつが来たら、真面目に修行してる人や教えてる人に迷惑だ』
パリでやっていくなんて、本当に大変なことだと思う。
想像を遥かに超えた試練が、たくさん待っているだろう。
生半可な気持ちじゃついていけないことぐらい誰だってわかる。
恋だの愛だのに現を抜かしてる奴に、てっぺんを取れるわけがないんだ。
そんなの、京子だって痛いぐらいわかってる。
だからこそ、俺に言うことを悩んで悩んで今になってしまった。
俺は何で気付いてやれなかったんだろう。
何かしらのサインは出していたはずなのに。
仕事が忙しいなんて言い訳に過ぎない。
俺は自分が一番大事な女に、辛い役目を負わせるところだった。
最後ぐらい、男の俺に格好つけさせろよ…
『帰るわ』
荷物とコートを手に取り、足早に玄関に向かう。
『待ってっ!』