ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
京子の透き通った瞳から、止めどなく溢れる涙。
俺はそれを拭ってやることは出来ない。
『悪いけど、何年でも待ってるとか絶対に会いに行くとか、そんな恋人ごっこみたいな寒いこと俺、興味ないから』
『剛…』
『じゃあな』
俺はなるべく京子の泣き顔を見ないように、部屋を後にした。
パタン、と扉を閉めると、そこに凭れかかる。
外は粉雪が舞い、街を薄っすらと白く染めていた。
あいつ、どれだけ悩んで泣いたんだろうか…
俺には今日の今日まで何も言わず、一人で考えて。
結局、あいつにとって俺は、弱みを見せれる居場所じゃなかったってことなのか。
はぁ、っと息を吐くと、白い吐息が空に上がった。
持っていたコートを羽織り、首元までファスナーを上げると、ポケットに手を突っ込んで帰路についた。
時折吹く冷たい風が頬に残る涙の跡を撫でると、心の奥底まで冷えていくような感覚がした。