ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
『そう…あんま無理しないでよ?倒れたら元も子もないからね』
『ああ、わかってるよ』
『もういいだろ。じゃあな』と、電話を一方的に切ろうとすると、ハルが『ちょっとまだ終わってないわよっ!』と慌てて制する。
ったく、声がでけぇって何度言ったらわかるんだ。
『まだ何かあんのか?』
『京子のことなんだけど…』
今一番聞きたくない名前に、ピクッと瞼が上がる。
『あの子には内緒にしててって言われたんだけど…今日の12時の飛行機だそうよ』
『何でお前が知ってんだよ』
『半年前から相談されてたのよ。いつ、どうやって剛に言おうか』
何だよ、それ。
そんな前から、俺だけは何も知らずに過ごしてたのか…
京子にとって、俺の存在って何だったんだ?
何でも言える関係じゃなかったのかよ…
『ねぇ、剛。京子のこと、許してあげてね』
『……』
『好きだからこそ、言えないことがあるのよ』
“好きだから”か…
あいつ、馬鹿だよ。まじで。
時計に目をやる。
出発時刻まで残り三時間を切っていた。
『…今から行けば間に合うわよ?』
『行かねぇよ』