ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
今ここで行ったら、クリスマス・イブにあんな風に冷たくした意味がなくなる。
あいつをもうこれ以上傷付けたくない。
『いいのね?このままで』
『もう、決めたことだ』
こういう決断をしたことに後悔なんてない。
あるとしたら、ギリギリまで気付いてやれなかったことだ。
もう少し早く気付いてやれてたら、こんな別れ方にならなかった。
傷付けることだってなかったかもしれない。
もう今更、後の祭りだけど。
『わかったわ。もう何も言わない』
『ああ』
『今度新年会するわよ?オアシス・カフェのオープンに向けて景気付けに沢山飲まなくっちゃ‼︎』
微かに、電話口から騒音に紛れてアナウンスが聞こえる。
それがすぐに空港だとわかった。
多分、京子を送っていったんだろう。
俺に電話してるぐらいだから、今近くに京子はいないと思うが。
コソコソ電話するハルの姿を想像すると、ふっと笑みが漏れる。
『じゃあな、また連絡するよ』
『そう言ってなかなかしないんだから』とハルがぼやいてるのを聞き流して、俺は電話を切った。