ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
駅前広場から脇道に入り、住宅街に進む。
30にもなって、女絡みでこんな風に全速力で走るとは思ってもいなかった。
前の俺なら、いい大人が必死になってカッコ悪い、情けないって蔑んでいたかもしれない。
現に京子がパリに行くって聞いたあの日、俺は簡単にあいつを手放した。
俺の存在が邪魔になる、なんて相手を思って決めたように自分を正当化してるけど、実際は俺自身が冷めていたんじゃないかと思う。
“行くな”
“待ってるから”
“絶対に会いに行くから”
凄く好きな女なら、恥ずかしくたっていい。
情けなくたって、カッコ悪くたって構わなかったんだと、今になって思う。
「公園…あそこか…っ」
探し始めて二つ目の公園を見つけ、足を早める。
俺の体力はすでに限界を迎えていた。
「ハァッ…っ、恵里……っっ‼︎」
公園内に植えられた、大人の背丈ほどある植木の陰にその姿を見つけ、俺は足を止め思わず言葉を飲み込んだ。
じわーっと汗が額に滲み出してくる。