ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


パイプ椅子に凭れ掛かると、ふぅ、とタバコの煙を吐き出す。


あいつらはまだ一緒にいるのだろうか。

恵里奈とあの男の関係は?
そもそも、あの場に男がいたのは偶然?
それとも恵里奈がわざわざ連絡して呼び出したのか。

もし、恵里奈が呼び出したのなら。

少なからず、ただの友達じゃない。
二人の様子からして、だいぶ気を許す仲だということは明白だ。

だとしたら俺はーー。



「珍しいっすね。並木さんが女に振り回されるなんて」

「あ?」


いつの間にかスタッフルームに入って来ていた卓人が、ふっ、と笑うと、俺の前に腰を掛けた。


「いいんですか?」

「何のことだよ」

「見たんですよね?彼女が男といたとこ」


卓人の言葉に、ピクッと右の眉が上がる。

やっぱりこいつも見たのか。


「良いも悪いも俺に言う資格ねぇだろ。あいつを泣かせたのは俺なんだから」


辛い思いをさせた張本人が、あの場面でとやかく言う権利も資格もないだろ。


「は?資格って何すか?恋愛に資格なんてないっすよ。彼女が好きなら、例え傷付けたのが自分でも、俺なら他の男に慰めさせたり送らせたりしない」


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