ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


「案外、気にしてるのは並木さんだけだと思いますけど」

「は?」

「気になるなら最初っから付き合わないですよ」


そう言って席を立つと、卓人は「じゃ、俺帰ります」とひらひら手を振ってスタッフルームを出て行った。


まさか自分が大学生に恋愛相談に乗ってもらう日が来るとは思いも寄らなかった。

しかも、あの女嫌いで有名だった冷徹人間の卓人に、だ。
ホント、笑っちまう。


「…行くか」


今すぐに恵里奈に会いたい。
あの華奢な身体をこの腕で抱いて、温もりを確かめて。

ちゃんと自分の気持ちを言おう。
京子との過去も、自分が年の差を気にしていたことも。
そして、俺には恵里奈しかいないってことも。


タバコと携帯、車のキーを持ってカウンターに向かう。

常連客と話してたハルは俺に気付くと、ハルお得意のウィンクを投げてきた。

行ってこい、って送り出してくれるハル。
いつもいつも自分の事のように心配してくれるこいつに、恵里奈の飛びっきりの笑顔を見せてやろう。

きっと涙を浮かべて喜んでくれると思う。



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