ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「すみません。少し恵里奈さんをお借りしても宜しいですか?遅くならないように送り届けますので」
「ふふ。どうぞどうぞ」
どっからどう見ても娘よりだいぶ年上の男が、突然夜に“彼氏です”って家に来たら不審がるかと思ったのに。
恵里奈のお母さんはそんなに驚きもせず、怪しむこともしなかった。
むしろ優しく微笑んでくれるし、好意的な感じで、結構緊張してた分拍子抜けしてしまう。
俺はお母さんにお礼を言うと、「え⁉︎」と焦る恵里奈の手首を掴んだ。
「行くぞ」
一瞬抵抗しようと力を入れた恵里奈を逆に引き寄せて、有無を言わすまいと強引に歩き出すと。
「ちょっと」
ずっと俺を睨み続けてた健が、口を開いた。
まだ穢れを知らなさそうな力強い瞳が何か言いたげに俺を映す。
「恵里奈を送ってくれたこと感謝する」
「別にあなたに感謝されることは何一つしてませんので」
二人の間に火花が散り、子供染みてるけど、ここで先に目を逸らしたほうが負けのような気がしてお互い瞬きすらしない。