ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「気にならないんですか?俺と恵里奈が2人で帰って来たっていうのに」
棘のある言い方に、右眉がピクッと上がる。
まるで俺を挑発しているようだ。
「別に」
「別にって、随分余裕なんですね。さすが、大人の男性は俺らなんかとは全然違う」
「ちょっと、健ちゃん!」と慌てる恵里奈を制するように、恵里奈を俺の背に隠す。
「何が言いたい?」
「はっきりと言います。恵里奈に貴方は重過ぎます」
「重い?」
「恵里奈はまだ何も知らない高校生です。貴方の過去を背負うのも未来を一緒に見るのもまだ無理です」
健の言葉に、俺は唇を噛み締めた。
30のおっさんとの未来も、過去も、恵里奈のような純粋無垢な高校生が背負えるわけないことぐらい、こいつに言われなくたってわかってる。
だけど、それでも俺は恵里奈が欲しい。
だから今までの俺は、そのことを何度も何度も考えては考えないように頭の片隅に追いやって、いつか来るであろう恵里奈の限界を見て見ぬ振りしてきたんだ。